ここでは、中学校で特別支援学級に通っていた生徒が進学を考える際、その選択肢にどのような高校を入れるべきかについて説明します。
特別支援学級は、障害を持っているなど、教育を受ける上で特別な支援を必要とする児童や生徒のために、小中学校に設置されている学級です。
文部科学省の統計(文部科学省特別支援教育資料(平成27年度)【第1部集計編】)によると、平成26年3月に中学の特別支援学級を卒業した生徒のうち、98.4%の生徒が、障害や病気を抱えた生徒を受け入れている特別支援学校高等部や、全日制や定時制などの高等学校に進学しています。
特別支援学級からの進学自体は、現在ではかなりの割合になるものの、普通高校への進学は現実問題として難しいことであると言わざるを得ません。ここでは、特別支援学級からの普通高校への進学の現状について見ていきましょう。
そもそも、特別支援学級からの普通高校への進学が難しい原因にはどんなものがあるのでしょうか?そのひとつが、地域格差です。
地域によっては、中学校から特別支援学級に入った場合、通知表がもらえないというケースがあります。公立高校への進学の場合、中学1・2年時の3学期、中学3年時の1・2学期の通知表の内容がその指標となります。そのため、通知表がもらえないのでは公立高校への進学は絶望的となってしまうのです。
また通知表がもらえたとしても、評価はそこまで高くはないでしょうから、やはり進学は難しくなってしまいます。そしてこうした状況は、地域によって異なるのです。そのため、十分な能力があっても生まれた地域によっては進路を閉ざされてしまうという状況があるのです。
障害がある児童の場合、やはり通常学級より特別支援学級に入ったほうが適切な措置を受けられると思うのは当然のことでしょう。しかし現状はそうではありません。障害のある児童の親の中には、特別支援学級に子供を入らせたくないと考える人も少なくないのです。
例えば、ICT教育のモデル校であるつくば市立春日学園のような学校であれば、最先端の設備や教育が期待できるでしょう。しかし、日本全国すべての学校がこのレベルに達しているとは到底言えません。タブレットひとつの持ち込みに関しても、それを利用して授業を受けるための設備や管理の問題が生じるからです。
また、支援学級そのものの格差も大きく、「支援学級よりも通常学級のほうがまだまし」という理由から子供を通常学級に通わせている人も少なくなく、適切な支援を受けられる支援学級の数はまだまだ少ないのが現状なのです。
中学校の特別支援学級からの進学者数は、以下のようになっています。
(参考元:東京都教育委員会の統計調査より)
http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/toukei/25sotsugo/kekkatokubetsushien.pdf
※現在は閲覧できないようです。
このように、支援学級から高校への進学率は9割を超えており、徐々に増加傾向にあります。文部科学省の報告によれば、中学校の特別支援学級の卒業者で進学した児童のうち、特別支援学校の高等部に進学したものは63.4%となっています。
しかしながら、現状では一般の高校には特別支援学級が設置されていないのが現状です。高校は義務教育ではありませんし、高等学校学習指導要領の特別支援学級に関する記述も少ないです。特に公立高校への進学率は非常に低いと言わざるを得ません。
特別支援学級で学んでいた生徒が本人の意思で、中学卒業後に養護学校などの特別支援学校高等部へ入学するのであれば、それはよいことです。ですが、軽度の発達障害だったり、その疑いがあったりするグレーゾーンの生徒の場合、内情をよくわからないまま特別支援学校に入学してしまうケースも少なくありません。それは、生徒の家族や周囲の大人たちも含め「特別支援学級の生徒は、卒業後は特別支援学校へ」という流れが普通だと思ってしまっている方が多いからです。
発達障害がある生徒は、助けを借りなくとも自分自身でできることがたくさんあります。そのため特別支援学校に進んでも、授業内容に物足りなさを感じたり、周囲へのギャップを感じたりする場合も多く、そうしたことが原因で不登校につながることも多いのです。
せっかく特別支援学校を卒業しても、高校卒業資格は得られません。特別支援学校高等部の卒業資格は得られますが、これは高卒資格とは別のものです。この状態では、中学までの卒業資格しか取得していないことと同じで、就職先も限られてしまいます。やれることはいろいろあるのに、将来の進路を狭めてしまいかねません。
発達障害があっても、全日制の高校で学ぶことに支障がなければ、その進学も十分に可能です。ただ、小中学校の特別支援学級で少人数で授業を受けてきた生徒にとっては、学習環境がガラリと変わってしまうことも考慮しておくべきです。全日制の高校に通うとなると、一気に周囲の生徒の人数は増えます。友達が増えるというメリットもありますが、コミュニケーションを苦手とするような発達障害を持つ生徒には、逆にストレスを与えてしまいかねません。
また、グレーゾーンにあたる「発達障害疑い」の生徒の場合は、周囲の大人や友人も含めて本人に障害がない前提で接することになります。すると、周囲とのギャップを感じたり、流れにうまく乗ることができなかったりして、心をすり減らしてしまう生徒もいます。そうした時に、周囲からの理解やサポートを受けられないと、孤立や不登校などの二次障害に発展してしまいかねません。
そうした状況にしないためにも、発達障害を持つ生徒の高校進学には、サポート体制がしっかりと整っている学校を選ぶことが大切になってきます。もしご自身のお子さんに「よその子と違う」という雰囲気を感じ取ったら、まずは発達障害について調べてみることもおすすめです。そして、なんとなくでも心当たりがあれば、進学先についても真剣に考えてあげてください。
通信制高校の中には、発達障害をもった生徒の受け入れ態勢を万全に整え、しっかりとした卒業・進学実績のある学校もあります。メンタル面のサポートを受けながら、生徒の個性や資質に合わせたカリキュラムで授業を受けることで、一人で生きていける力も自然と身についていきます。高校卒業資格も取れる上、本人に意欲が芽生えれば、大学進学を目指すこともできます。
通信制高校を選ぶ時にまず確認したいのは、公式サイトやパンフレットの情報です。そして、実際にその学校にも足を運んでみましょう。学校関係者や先輩達の生の声を聞くことで、その学校の教育方針や学習スタイルについて、より理解を深めることができます。
各学校では入学希望者に校内の様子を公開する「オープンキャンパス」を設けているところもたくさんありますので、ぜひそうした機会に訪れてみることをお勧めします。
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