軽度の知的障がいのお子さんが高校進学を希望した場合、お子さんの特性に合う環境が整っている通信制高校であれば通える可能性があります。こちらでは、通信制高校の概要や軽度の知的障がいのお子さんが通信制高校を選ぶポイントなどをまとめています。
軽度知的障がいとは医療的診断名ではなく、知的障がいと判断された中でも症状が「軽い」と分類された診断を示す言葉です。
知的障がいとは、一般的に18歳未満の発達期に知的発達が実年齢よりも低い状態のことを指し、IQ(知的指数)と日常生活能力(適応能力)の2つを用いて診断されます。読み書き、計算、考える能力などを測定する知能検査と、日常生活のさまざまな場面で適応していく能力を総合して診断します。
おおむねIQ51~70の数値領域にいる方に対して軽度の知的障がいの特性を持つと診断されます。
知的障がいの分類を見ていきましょう。
知的障がいは「IQ(知的指数)」と「日常生活能力(適応能力)」によって「軽度・中度・重度・最重度」の4つに分けられます。
まず、IQとも呼ばれる知能指数は標準化された知能検査を実施して数値をチェックします。その場合、平均値はIQ90~109とされ、おおむねIQ70未満の方が知的障がいの領域となります。
さらに、この知能検査の数値に日常生活を送るための能力が加味されます。具体的には時間の使い方やお金の管理、周囲との人間関係の構築など衣食住に関する自主管理能力の項目を評価して、IQ値と総合的に判定されます。
知的障がいが軽度のお子さんの場合、「言葉が遅い」「同世代のお友達と遊ぼうとしない」「特定の物事に対するこだわりが強い」などの傾向があります。ただし、ある程度身の周りのことはできるために小学校低学年頃までは周囲に気付かれにくいこともあります。
学年が上がるにつれて学習についていけなくなったり、友達とのコミュニケーションにストレスを感じてひとりで悩みを抱えてしまうケースも少なくありません。周囲が軽度の知的障がいを抱えていることに気が付かなければ、「努力しないから成績が悪い」「変な子」「段取りが悪い」などのレッテルを貼られて二次的な心身不調をきたしてしまう子もいます。
学校教育法によって、高等学校の卒業資格を得るためには「3年間以上(36ヶ月以上)の在籍」が必要です。
1年間で取得できる単位数は35単位程度が上限と決まっており、1年次や2年次に多く単位を取ったとしても在籍期間を短縮することはできません。また、多くの通信制高校は学年制ではなく単位制を採用しているため、留年という概念がないことも特徴です。
編入や転入で通信制高校に入学した場合は、在籍していた高校の在籍期間を加算します。
通信制高校では、必履修科目を含む74単位以上を卒業までに取得することで卒業できます。
単位は「レポート」「テスト」「スクーリング」という3つの要件を満たすことで認定されます。
単位取得の流れは、教師から出された教材をもとに自宅でレポートを解いて提出。穴埋め式や教材の内容を要約するなどの形式が主流で、教師はそのレポートを添削して返してくれます。その後年2回程度の単位認定試験を行い、その「テスト」に合格すれば単位習得です。
また「スクーリング(対面授業)」は、実際に高校へ登校して教師から勉強を教わったり質問して自学自習やレポートの理解度を深める時間のことです。
30単位時間(1単位50分と計算する)以上の特別活動へ参加することも必要です。特別活動とは、ホームルームや体育祭や文化祭、修学旅行などの学校行事、クラブ活動への参加、地域の清掃活動等を指します。こういった特別活動は、スクーリングに合わせて実施されることがほとんどで、毎月1回の登校であったり、数日間の合宿形式で年1回実施される学校もあります。
軽度の知的障がいの方がぶつかりやすい壁は、学習を計画的に進められない状況になってしまうことです。自主学習がメインの通信制高校では、出された課題を理解してレポート提出することで単位を取得します。軽度の知的障がいを抱える方は、その課題を自身で理解することは容易ではなく、理解できないために学習に対するモチベーションが低下してしまうケースもあります。
もともと通信制高校は、郵送でレポート提出や添削を受ける自主学習性の強いスタイルでした。現在も公立の通信制高校はこのようなタイプの学校が多く、学校側と生徒との直接的関係が薄くて個々の生徒への支援体制があまり整っていないことがあります。
ただし、最近ではインターネットの普及と入学する生徒のニーズの多様化によってさまざまなタイプの通信制高校が登場し、困ったことがあればネットですぐに教師と連絡が取れたり、担任制を設けて担任が積極的に生徒をサポートするような学校、小学校や中学校からの学び直しのシステムを設けている学校が増えています。
そういった通信制高校を選べば、軽度の知的障がいの方でもついていくことができる可能性が高まりますが、適切なサポートや配慮のない学校の場合は、学習面において卒業が難しいかもしれません。
中学校卒業後、軽度の知的障がいを抱えるお子さんの進学先として『特別支援学校の高等部』という選択もあります。特別支援学校高等部と通信制高校は教育の内容と目的が異なることと、お子さんの知的脳障がいの特性・本人の意思などが関わってくるため、一概にどちらが良いのかとは言えません。
特別支援学校高等部は、障がいのある生徒の特性と情緒面などの状態を考慮し、学年ではなく段階別に授業の内容を構成しています。 将来自立した生活を送れるようにするための生活習慣や社会性の向上、職業訓練などもカリキュラムに含まれています。
一方、高等学校では、高等学校で習得すべき教科の学習に重点が置かれています。大学進学や一般的な職業への就職準備が主な目的となります。
進学する先は、お子さんが合うカリキュラムであるかと将来の進む道を配慮して決めることが大切です。そしてもう一つ、特別支援学校高等部を卒業したとしても、「高卒」にはならず「中卒」という扱いになる点は注意して下さい。
軽度の知的障がいを抱えるお子さんが通信制高校を望む場合、お子さんの障がいに対するサポートや環境が整っているかどうかを確認する必要があります。
最近の通信制高校は、小学校からの学び直しや障がいの特性に対する理解、お子さんに合うカリキュラムの提案・学習計画指導といったお子さんの“できること”を増やしてくれる支援を提供している高校も存在します。
軽度の知的障がいのお子さんを通信制高校へ進学させたいのであれば、お子さんが安心して学習を進められるように、特性に合う学習支援を行ってくれる高校であるかを確認する必要があります。
そのためにも、保護者の方は学校見学等に知能検査の結果や医師の診断書などを持って、高校側にお子さんの特性を直接伝えて反応を見てみましょう。そのうえでどのようなサポートを受けられるのか、軽度の知的障がいのお子さんを指導した経験があるのかなども質問・相談して候補に入れるかを決めてください。
保護者とお子さんの意思や方向性が一致するとは限りません。親御さんは「高卒」という資格が欲しいので通信制高校へ入学させたくても、本人に学習を継続する意思がなければ単位を取得して卒業するのは困難です。
将来自立に向けて日常生活や社会生活の基礎を学びたいのであれば、特別支援学校の高等部へ進むほうがお子さんのためになることもあります。学習に取り組むのはお子さん本人なので、話し合って意思をしっかりと確認しましょう。
通信制高校に入学するのはそれほど難しくありませんが、単位を取り続けていくのは軽度の知的障がいを抱えるお子さんにとって決して簡単な事ではありません。また、高校卒業後にどのような方向に進みたいのか、なども見据えて進学先を選ぶことも大事です。自立に向けたソーシャルスキルや仕事の基本的スキルなども学べる環境であるとベターです。
最近の通信制高校は多様化が進み、学校ごとに特色があり、不登校や発達障がい、学習の遅れが目立つ生徒などに対して手厚い支援が受けられる通信制高校も存在します。入学してから後悔しないように、軽度の知的障がいを抱えるお子さんが適切なサポートを受けられるのかを事前に学校へ訪問して確認してください。
目的や特徴から選ぶ!
おすすめの通信制高校
・技能連携校
通信制高校は、学校によって力を入れている分野や強みが異なります。
ここでは、学校に求めるサポート体制や通信制高校に入学する目的別でおすすめの通信制高校を紹介しているので、
自分自身やお子さんの個性、希望の進路に合った通信制高校を選びましょう。